友人から、
岐阜新聞の記事の切り抜きが送られてきた。
朝日大大学院法学研究科
杉島正秋教授の
「イスラムへの理解 草の根交流で深く」
大変共感したので、
今日はそれをご紹介させていただきたい。
杉島教授の記事の末尾に、
「一口にムスリムというが、もちろん彼らは
一人一人まったく違う。私と同じように
日々の暮らしがあり、そして愛すべき家族がいる。
そんな単純な事実に気づき、
コミュニケーションを深めることが、
草の根レベルでのテロ対策として、
もっとも大切なことではないだろうか。」
とある。
日々の生活の静かな平和な営み。
私たちが求めるのは、
それ以上でもそれ以下でもない。
対立は対立を生むだけ。
自分が正しいいう思いに
しがみつくと、
その途端に、自分と相容れない考えの人を
悪とみなすのは私たち人の陥りがちなところ。
「紋切り型のレッテル張りが、
人類の歴史において、
これまで世界中で国家・民族・宗教間
の対立をあおり、
幾多の悲劇を生み出したきた。」
私たちが目の前の人に、世界に、
善悪のレッテル、
友か敵かのレッテルを貼ることなく、
ただ、対立があるという
ありのままの事実を
どこまで静かに見つめられるか、
これは地球に生きる私たち全員の課題と思う。
ブログでのアップのご了解を打診したら、
著作権の絡みもあるとのことで、ご丁寧に
オリジナル原稿をお送りいただいたので、
読み易くなった。
是非、全文をお読みいただきたい。
゜+.――゜+.――゜
草の根でのテロ対策 “相互理解が第一”
杉島 正秋
朝日大学大学院法学研究科 教授 (2016年7月27日 岐阜新聞朝刊「オピニオン」)
7月1日、バングラディシュの首都ダッカで、レストランが武装集団に襲撃され、日本人 7名を含む従業員や客 20 人が死亡した。翌日、IS イスラム国バングラディシュ支部が「十 字軍参加国の市民を標的にした」と、犯行声明を出したとされる。死亡した日本人はいずれ も、国際協力機構(JICA)の事業を通じて、バングラディシュの発展を支援すべく、汗を 流していた人たちであった。痛ましいとしか言いようがない。
こうしたテロが起きるたび、ムスリムは何を考えているのか理解できず怖いと感じる日 本人が、私のまわりでも確実に増えている。彼らの多くは、イスラームについての知識が白 紙の状態で、テロや IS についてメディアの情報に接した結果、そうした感情を抱く。
かくいう私自身、3年前にインドネシアへ行き、ジャカルタで東南アジア最大のイスティ クラル・モスクを見学したとき、モスクのスタッフから、毎週金曜日には、シーア派である イランの外交官たちが最前列で礼拝するという話を聞いた。インドネシア人の多数はスン ニ派だ。両派の対立しか頭になかった私には、その話がとても新鮮で、自分はイスラームに ついて本当に何も知らないと痛感した。
その体験がきっかけとなり帰国してから、非ムスリムも参加できる名古屋モスクのアラ ビア語とコーランの入門講座に参加するようになった。1年間講師を担当してくれたシリ ア人の先生(現在は岐阜モスク代表者)からは、「左手にコーラン、右手に剣」がムスリム への偏見から生まれたフレーズであること、ジハードの原義は「信仰のために努力すること」 で、自己との戦いが最も大切であることなど、コーランの基礎知識を色々と教わった。肝心 のアラビア語については、「辛抱強く、不出来な生徒に教えるのも、ジハードですよ」とい うことで、先生にはご勘弁いただいている。
そして講座が進むにつれ、こうしたイスラームについての基礎知識は、若い人にこそ、知 っておいてもらうべきだとの思いが強くなり、昨年から、朝日大学法学部・経営学部の1年 生全員を対象にした必修科目「建学の精神と社会生活」の一コマとして、イスラームについ て話を聞く時間を設けさせてもらった。今年は、名古屋モスクの渉外担当理事に講義をお願 いした。
お話の中では、IS のメンバーは3万、全世界 16 億のムスリムからみればごくわずかであ り、岐阜県下の大学生約2万人に1人の割合にも満たないという指摘があった。それをふま えて、IS の思想や行動をもってイスラームを評価することは、思想や行動の奇矯な大学生 一人に岐阜県の全大学生を代表させることに等しいのではないかと、受講している学生た ちへ疑問が投げかけられた。
今回の犯人たちは、コーランの章句を暗誦させ、できなかった人々を殺害していったとい う。そこにはきわめて単純化された、友(=ムスリム)/敵(=非ムスリム)の発想しかな い。そうした紋切り型のレッテル貼りが、人類の歴史において、これまで世界中で国家・民 族・宗教間の対立をあおり、幾多の悲劇を生み出してきた。
名古屋モスクへ通い始めてから、様々なムスリムから知遇を得ることができた。一口にム スリムというが、もちろん彼らは一人一人まったく違う。私と同じように日々の暮らしがあ り、そして愛すべき家族がいる、そんな単純な事実に気づき、コミュニケーションを深める ことが、草の根レベルでのテロ対策として、もっとも大切なことではないだろうか。
すぎしま・まさあき
1958 年東京都生まれ。金沢大学法文学部法学科卒、名古屋大学大学院法学研究科博士前期 課程修了、同後期課程単位取得退学。修士(政治学)。専門は国際関係法(特に軍縮・安全 保障分野)。名古屋大学助手などを経て、2005 年から現職。前朝日大学法学部長・大学院法 学研究科長。著書は「バイオテロの包括的研究」(朝日大)など。57 歳。
゜+.――゜+.――゜
今日の写真は、
悲惨な現実の向こう側には、
私たちが創り得る、明るい未来がある。
何もかも凍りついた大地に春を招こう。
「できる、やる氣で!」(回文)
その象徴。
コメントを残す